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社名に”茶”も”TEA”も入らない。 新しいカタチでお茶をデザインする会社THE CRAFT FARM。 〜後編〜

水野さんの移住ストーリーを伺い、いよいよTHE CRAFT FARM(ザ クラフトファーム。以下TCF)の作っているお茶について伺います。お茶作りのフィロソフィー(哲学)も合わせて聞きました。

関連会社TeaRoomのオーダーに全力で応える

TCFの業務内容について、より具体的に教えてください。

水野

3つの軸がありまして、1つ目は「生産」。
これは茶畑の管理、生葉を作るまでの実作業です。

次に「製造」。
荒茶の製造やその後の仕上げ、ブレンドまで。パッケージの外注手配やロジスティック(流通)も含まれます。

最後が「開発」。
工場の一角が開発室です。いろいろな茶葉を使ってブレンドや着香をしています。

TeaRoomからの案件は結構特殊なものも多く、普通のお茶を納品することはほとんどありません。「このひと皿に合わせたこういう雰囲気のお茶」とか、コミュニケーションしてすり合わせて、徐々に形になっていくものが多いのです。その都度試行錯誤して、詳しい方や専門家に教えていただいたりもしながら開発しています。紅茶開発のときは猿島まで勉強しに行きました。ハーブ・スパイスは静岡県内の企業に協力してもらっています。
聞かないと分からないし、TeaRoomの発注に応えられないので、商品が完成するまで、分からないまま放置はできないんです。

TCFの商品は全てTeaRoomの案件なのですか?

水野
ほとんどがそうですが、キルフェボンは直接お声がけいただきました。静岡県内のショップや企業とは、これからもTCFとしてコラボレーションしていきたいと思っています。
TeaRoomが担えない部分をTCFができたらいいな、と思っています。

TeaRoomが担えない部分とは、具体的にどういうことですか?

水野
それはたとえば茶畑を所有し、生産から一貫して携わる茶業ということです。TeaRoomとTCFを明確に分けることは難しいのですが、一言でいうと、得意分野が違う。TCFが得意なことは、後で詳しくお話しますが、日本各地に眠る技術を掘り起こすこと。お茶に関して言えば、僕が静岡に移住することで生まれた人間関係、その文脈での協業もそうですし、やはり「一貫したお茶の商品開発」だと思うんです。農業法人を立ち上げることがTCFスタートのきっかけにもなっています。実際に静岡に農地を持ち、そこに責任を持って取り組み、地元の技術を伝承したり、新しく編み直したりすることが、僕たちの指針になっています。THE CRAFT FARMには社名に「TEA」や「お茶」の文字は入っていないんです。先程の話にもなりますが、僕は日本の各地に技術が眠っていると思っていて、TCFはお茶を軸にして、それを掘り起こして大切にする会社にしたいと思ったんです。それがCRAFTの部分。
そしてファームは農園の意味も持っていますが、コンサルティングファームのように、いろいろな知恵が集約する場という意味も持ちます。社名のFARMはその両方にかけています。いろいろな技術を組み合わせてお茶を楽しく展開していきたい、それが自分たちの指針です。

僕たちがおいしいと心から思う推しのお茶

ではTCFのおすすめのお茶を教えてください。

水野
まずはこれです。アールグレイ煎茶。
私はアールグレイ煎茶は、色も味わいも浅蒸しの煎茶のほうが向いていると思うんです。軟水にぴったり合う、日本らしいフレーバーティーです。これが完成したときは「おいしいなあ」としみじみ思いました。ほっと一息つきたい時に是非飲んでほしいです。
夏に冷茶で飲むのがおすすめですが、寒い時期に熱く淹れてもまたおいしいと思いませんか? 緑茶のおいしさも伝わるように、ベルガモットの着香はやり過ぎないように気をつけました。
洋食に合うのでレストランでも使っていただいています。

香りがさりげなく爽やかでとてもおいしいですね。
一つのティーバッグからかなり濃い目に味が出るのもいいと思います。茶碗ではなくカラフェなど、容量の大きなボトルやティーサーバーで淹れて数人でのむのがいいかもしれません。

やぶきた アールグレイ 煎茶

ベルガモットが持つ爽快なシトラス感と、煎茶の香り高い青みがマッチングし、紅茶のようだが、煎茶の面白い味わいを演出している。
心地よいオーケストラを聴いているようで、午後の仕事に疲れたシーンでぜひ飲みたい珍しいフレーバーティー

品種:やぶきた
クラフト:浅蒸し
ブレンド:フレーバー
ジャンル:フレーバーティー

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もう一つは2022年の新茶です。
これは熱湯でさっと淹れるのがおすすめです。お茶の甘みが最後に来るのが特徴です。


後味が甘くて幸せな気分になります。余韻が残る味わいです。

お茶をおいしく淹れるコツは「難しく考えないこと」

新茶を自宅で淹れる場合、おいしく淹れる方法を教えてください。

水野

5gの茶葉に対し、350mlくらいの熱湯で1分くらいの抽出時間が僕は好きです。結構薄めでいいと思います。そうすると、旨味というより甘みが感じられる味わいになります。
でも、あまり難しく考えずに淹れてもらえたらと思います。

水野さんが家で飲むお茶は何ですか?

水野
ほとんど烏龍茶です。何煎も飲めるし、身体は温まるし、代謝も良くなりますし。湯船に浸かるのと同じくらい身体を温めて代謝が良くなる効果があると聞いたことがあります。
もともと中国のお茶のいただき方がフラットでとてもいいと思っているんです。亭主を立てず、淹れたい者が淹れて、何煎も飲み、2〜3時間をともに過ごす。人種も性差も関係なく、それぞれの淹れ方とそれぞれの飲み方を尊重し合う。
香りが脳に作用して気持ちも上がりますし、お茶を飲んでフラットな関係になるってすごくいいと思いませんか?

悩んでいたとき、出された1杯のお茶で救われることって、全然あると思うんですよ。お茶にはそういうパワーがあります。

TCFのメンバー。左から池﨑修一郎、水野嘉彦、梶原康太

取材・文/朝比奈 綾 撮影/近藤ゆきえ

イチオシポイント

一つの工場で一貫して開発することで個性的なお茶が誕生

THE CRAFT FARMおすすめは熱湯で淹れる浅蒸しの「新茶」。飲み干した後、口中に甘い余韻が残ります。そして、ベルガモットが絶妙なバランスで着香された、日本の軟水のためのフレーバーティー「アールグレイ煎茶」。どちらもきれいな色味なので耐熱の透明なグラスで味わうとお茶の時間がさらに楽しくなります。生産から開発まで一つの場所で行われているからこそ、個性的なオーダーにも応えられるTCF。日本茶は荒茶製造と仕上げは別の場所で行うことが多く、淹れ手から遥かに離れています。水野さんは一貫して請け負うことで、製造から淹れ手までの距離を可能な限り縮めたいと話しています。

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運営母体が解散する方針となり、使用されなくなってしまった山奥に佇む小さな茶工場。
古くからここに地域産業として根付くお茶作り。
絶やすことなく次世代へと繋いでいきたいという想いで私たちはこの工場を引継ぎ、再生へ向けて運営しています。

THE CRAFT FARM

静岡県静岡市葵区渡1448-6

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素材を知り、活かし、届ける。畑では土や自然と対話し、素材が最も活きる方法を模索した上で、それを最も喜んで頂ける状態で多くの方へ届けます。

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