みんな言いますね、帰りたくないって 〜黄金みどり茶園 前編〜
- 絶景のために、ハイキング30分。目指す「黄金みどり茶園」の古民家テラスは、標高550mの場所にあります。受付となる場所で水出しの「黄金みどり」が入った水筒を受け取り、いざ出発。鳥のさえずりや風の音、芽吹く木々。なかなか急な山道を無心に歩いていると、自分を取り巻いていた日常が、だんだん薄れていきます。
目 次
金色に輝く茶畑を見下ろして
到着しました!急に視界が開ける迫力がすごいですね。今日はよろしくお願いします。
佐藤浩光(以降「佐藤」)
よろしくお願いします。
佐藤さんといえば、「黄金みどり」。シーズンになると金色に輝くお茶畑が、とても有名です。「黄金みどり」は確か、偶然発見したのですよね?
佐藤
そうです。私の親父がね、茶畑の中できれいな金色の茶の芽を見つけて、最初は「とても綺麗だから家の生け垣にどうか」と思って、育て始めました。このテラスの真下に広がる畑がそうです。
そうしたら、味も良かったのですね。先ほどいただいた、水筒の「水出し」も、すっきりとしていて、とてもおいしかったです。佐藤さんが作っているお茶の種類は、やはり「黄金みどり」がメインですか?
佐藤
「黄金みどり」が中心ですが、その他にもいろいろ作っています。やぶ(「ヤブキタ))もやるし、「大棟(おおむね)」も作ってるし、烏龍茶用に自分で選抜し、育種した「向日葵」もあります。
烏龍茶ですか?
佐藤
はい。他の人と同じことをするのが嫌なんです(笑)。「黄金みどり」はほうじ茶もおいしいので、後でぜひ飲んでみてください。
楽しみです。お茶の話も、後でじっくりお聞かせください!
ここはなんだか、特別な場所らしい
今いる、こちらの古民家は、庄屋さんの家のようですね。とても立派です。
佐藤さんは子供の頃、ここに住んでいたのですか?
佐藤
そうです。10歳までここに住み、ここから大川小学校に通っていました。この家が建てられたのは、確か明治3年です。同じ場所に江戸時代からあった家を壊して建て直したそうです。
とても落ち着きます。
佐藤
そうおっしゃる方が多いです。「帰りたくないなぁ」って(笑)。普段、過ごしている場所と全然違うんでしょうね。普通の観光の方以外にも、ヨガやダンスのワークショップをしたり、ここでワーケーションをした会社もありましたよ。だからWi-Fiも完備です。
佐藤さんにとって、諸子沢はどんな場所ですか?
佐藤
どんな場所って(笑)。他に住んだことがないから、比べようがないよ。子供の頃は毎日、往復10kmかけて小学校に通っていて、放課後はちょっとうんざりして「この坂道を上らなきゃならないのか〜」なんて思ったりもしました。でも、上らなきゃ、帰れないから。小学校には、本当は山を抜けていけば早いんだけど、そこは通学路ではないから、一旦降りて、片道5キロ歩いていました。そういうことは当たり前にやってきたし、この場所が特別だとか、自分では何とも思わないんだけどね。
かなり特別な場所だと思います。
佐藤
なんか、そうらしい(笑)。ここには静岡の人も来るけど、県外の人も多いんです。西は兵庫とか大阪、東は埼玉とか茨城とか。二人連れ、三人連れが多いです。景色を見てお茶を飲んだり、ちょっと昼寝したり、自由に過ごしてもらっています。子供の頃に毎日見ていた山の稜線とか、空が近い感じとか、ここの空気が人を癒やすんですかね。あっ、左の山、見て見て。猿がいるよ!
えっ、どこですか?本当だ、あの茂みにいますね。見え隠れしつつ、ガサガサ音もするし、木の枝が揺れています。結構、動物は来るのですか?
佐藤
来ます。猿、イノシシ、鹿も。猿はあの茶畑の左側に植わった金柑が好きで、よく食べに来ます。
飲んでみて本領発揮、「黄金みどり」
今、淹れていただいているのが「黄金みどり」ですね?
佐藤
そうです。1gの茶葉をひたひたに浸して5分。飲んでみてください。
先ほどの水出しとはまた違った旨味を感じます。おいしいです。茶葉もきれいですね。
佐藤
ありがとうございます。きれいですよね。こうしてここで、たくさんのお客さんと接していると、時々、とんでもない変態さんが来て、怖いときがあります。
変態さんですか!?
佐藤
そう。お茶の変態さん。お茶が好きすぎて、味覚がとても鋭くて、水の味の違いすら分かってしまうような方が、自然と集まって来ます。
マニアックということですか?変態さんと聞いて、ちょっと焦ってしまいました。
佐藤
あはは、危険な人という意味ではなくて、マニアックという意味です。お茶の味に精通している方々です。そういう方たちと話していると、緊張感もあるけど本当に楽しいし、こちらも勉強になります。お客さんは水にもこだわる方が多いので、最初にお伝えしておくと、うちのお茶は市販用のミネラルウォーターなら「南アルプスの天然水」が一番、相性がいいです。やっぱり、水と茶畑の場所が近い方が、相性がいいんだよね。関西ではあんまり売っていないようなので、申し訳ないんだけど、なんとか手に入れて、淹れてみてください。本当においしいですよ。
- 黄金みどり 煎茶
パッケージを開けるとまさに黄金の茶園
「黄金みどり」という品種に負けないほどのゴールデンカラーで圧倒されます
見た目とは異なり、味はトマトのような熟した旨み。食後に見た目も味も、2度美味しいお茶です。
・品種:黄金みどり
・クラフト:浅蒸し
・ブレンド:ストレート
・ジャンル:煎茶
商品はこちら
後編 「ニコニコしてお金を出せるお茶を」 に続きます。
取材・文/朝比奈 綾 撮影/近藤ゆきえ
言わずと知れた「黄金みどり」。そして…
山なみと「黄金みどり」の茶畑を見渡すテラスは最高のイチオシポイントですが、それ以外にも魅力がたくさんあります。まず、唯一無二の「黄金みどり」を、その場で淹れて味わえること。烏龍茶からGABA茶まで、種類豊富なラインナップから、説明を聞いた上で購入できること。佐藤さんのお茶作りの哲学が聞けること。「うちのイチオシポイントは独創性かなぁ」という言葉通り、他の人と同じであることを良しとしない佐藤さんだからこそ、最高の舞台にふさわしい、精魂込めたお茶が生まれたのです。「買う人がニコニコしてお金を払うお茶」という目標には、ストイックな向上心が見え隠れしています。
静岡の山あいに、突如現れる小さな黄金色の茶畑。目にも鮮やかな黄金色の葉が特徴の言わずと知れた「黄金みどり」。独創性から生まれた、最高の舞台にふさわしい、精魂込めた唯一無二のお茶。
ご自宅用はもちろん、贈り物にもとてもおすすめです。
黄金みどり茶園
静岡県静岡市葵区諸子沢219
054-291-2423
標高550mから茶畑を見渡すテラスはまさに絶景です。受付で水出しの「黄金みどり」が入った水筒を受け取り、非日常へ出発しましょう。