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品評会受賞も果たし、今、評判の若手生産者 〜志田島園〜

静岡の茶業界でも「若くて意欲的。品評会受賞もしている生産者」と評判の、志田島園・佐藤誠洋さん。繁忙期には、気がつくと手伝ってくれる人が集まってくるという志田島園の魅力について、お話を伺いました。

30分歩いても、敷地から出られない(笑)

佐藤さん、今日はよろしくお願いします。裏山がすぐに茶畑なのですね。

佐藤誠洋さん(以降「佐藤」)
はい、母屋の裏がすぐに茶畑で、その先にわさび田があります。この裏山そのものが敷地の中ですから30分歩いても、敷地から出られないんです(笑)。

相当広いですね。この農道は、佐藤さんとお父さんが作ったとか?

佐藤
「茶農家 わさび農家 ときどききこり」なので、木を切って沢に橋を渡して、茶畑まで乗用(摘採機)を運べるようにトラックが通れる道を作りました。山のお茶というと手摘みや、可搬型摘採機のイメージも強いと思うんですが、うちの畑は、効率化できるところはしていこうと思いまして。
*可搬型摘採機…バリカン状の二人用茶作業機を用い、茶の畝をふたりで挟み茶刈りをする摘採機。乗用摘採機が入れない山あいの茶畑でも使用が可能。

佐藤さんは子どもの頃から茶農家になるつもりでいましたか?

佐藤
いましたね。昔から父親にも「やるんだぞ」と言われていましたし、僕は農業高校に進学しているんです。その後は農学部に進みましたし、茶農家を継ぐことに抵抗はありませんでした。結局、僕がやらないと、この茶園が荒れてしまうのはもったいないということで、迷いはなかったです。逆に早く一人前になりたかくて、卒業後はすぐに家業に入りました。

ここに座ると帰れなくなる

これは何ですか?

佐藤
乗用(摘採機)って分かりますか?乗用を下ろすための台です。ここに軽トラックの荷台をつけて乗用を下ろせば、すぐに作業ができます。――わさび田も見ますか?

はい、もちろん!ありがとうございます。

佐藤
わさびも栽培しています。お茶が儲かるかと言われると、厳しい情勢ではありますがお茶の世話が好きなのでお茶に力を入れています。お茶の直販を始めるようになったらいろいろな人が来るようになって、繋がりが広がってきて面白いなと思っています。

繋がりができた方は、この景色を見ると大喜びするのではないですか?

佐藤
そうですね、ほとんどの方が、「ここに座ると帰れなくなる」と言います。なんだかんだ、静岡駅から車で40分くらいですし、母屋の前に車をおいて、歩いて10分程度で来れてしまうので、いい場所だと思います。来てくれた方が感動して、「家族と来ればよかった」と言って、後日、本当に家族や友だちと来てくださったこともありました。海外からのお客様が訪ねてくることもあります。茶園の説明をしながらご案内するのですが、質問に答えているだけで2時間くらい経ってしまいます。
*茶畑をめぐるツアーについてはホームページからお問い合わせを。

一番多いのはどんな質問ですか?

佐藤
「茶畑に立っている、あのプロペラは何?」ですかね。

茶産地ではありふれた光景ですが、防霜ファンを見たことがない人が多いそうです。

何よりこの、玉川が好きでした

佐藤
「お茶って面白いな、日本茶インストラクターの勉強をしようかな」というくらいのタイミングの人が、一番お茶について”熱い”気がします。そういう人と、うちのお茶が出会えたらいいなと思っています。

佐藤さんも日本茶インストラクターの資格を持っていますよね。

佐藤
はい。お茶のことが全体的に学べますし、僕はインストラクターの同期と仲が良くて、みんなでお茶のイベントを企画するのは楽しいですよ。

佐藤さんが茶園経営で一番力を入れていることは何ですか?

佐藤
土づくりです。土壌分析して、足りないものを補えるように、肥料は自家配合で作っています。菜種粕から魚までいろいろ配合していて、ほうじ粕やカカオの殻も使っています。これも縁で繋がった方々からいただいています。

農業高校と大学に進学されたことも、土づくりの知識に役立っていると思うのですが、15歳で進学を決めた時から、揺るぎなくお茶が好きだったのですか?

佐藤
その頃はお茶というより、この玉川が好きでした。いいところじゃないですか。町からの距離もちょうどよくて、自然に恵まれている。今も変わらず好きなんですが、集落としては昔より寂しくなってきて、娘もこのまま地元に進学すれば同級生がいないし、茶農家の後継者は3人しかいません。

奥様も元々、玉川に住んでいたのですか?

佐藤
いえ、もっと町中です。お茶のイベントで富士山に登ったら、たまたまその時、茶娘をしていて、その縁です。

茶縁ですね!

佐藤
はい(笑)。玉川に住んでみてどう思ったかは聞いていないですけど、楽しそうには見えるかな。僕は子どもたちに「茶業を継げ」とは言いたくないのですが「お茶をやってみたい」とは言ってもらえるような姿を見せられたらと思っています。僕の父は、「今のお茶時期(収穫期)が終わったら、次は畑をこうしたいんだ」と当然のように計画を話してきて、完全に僕が継ぐ前提でしたけど(笑)。でも、こんなに家のすぐ近くに茶畑があったら、「俺はやるんだろうな」と思ってしまいますよね。昔から茶畑が好きで、友だちを連れて来て、お茶の説明をしたりしていました。それが今のツアーに繋がっているんだと思います。

次の世代に繋がるお茶づくり

佐藤
僕は、本山の中でも玉川のお茶は特別だと思っているんです。なのに、山間地でお茶の経営を成り立たせるのは厳しい情勢。だから僕は茶農家として、一年間、お茶で生計を立てることができるスタイルをつくっていきたいんですよね。ちゃんと次の世代に繋がるような茶園経営とか、お茶づくりをすることを目的としたいです。その中で、一番の手段が「美味しいお茶を作ること」。

佐藤
この幼木はうちの畑によく来る仲間が手伝ってくれて植えたものです。「用意された体験は要らない」と言って、農家の仕事を本気でやる仲間です。本当に働き者なんですよ。

リアルが好まれる今、「用意された体験」を拒む気持ちは分かる気がします。――茶畑に藁を敷いているんですか?

佐藤
はい、これは稲わらです。「茶草場農法」という名前はついていなかったけど、茶農家では昔からおこなわれています。

初めて摘むのはいつ頃になりそうですか?

佐藤
どれくらいでしょう。このへんでは、よく「機械刈りまで5年」といいますが、手摘みなら来年できるかもしれませんね。――下に降りてお茶を飲みましょう!

今見た茶畑を思い返し、玉川在来種を飲む

佐藤
お出ししたお茶は、玉川の「在来種」です。先ほど、旨味より昔ながらの山のお茶が好きだとおっしゃっていたので、「ヤブキタ」よりこれが好きなのでは?と思って淹れてみました。

ありがとうございます!確かに、とても懐かしくてすごく好きな、ほっとするおいしさです。

佐藤
在来種もいいですよね。在来で作った「玉川在来紅茶」もあるんですよ。他は「やぶきた」はもちろん、「おくひかり」、「さやまかおり」や「香駿」も作っています。

在来 紅茶

焦がしたリンゴのようなトップの香りから、アプリコットのような果実感、バナナのような濃厚な味わいに変化する和紅茶。水色は夕焼けに照らされた山のような色で、心地よい夕方に飲みたいお茶です。

品種:在来
クラフト:発酵
ブレンド:ストレート
ジャンル:紅茶

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玉川早生 煎茶

玉川で生まれた早生の煎茶。早生はやぶきたよりも早く収穫が可能で、春一番に出てくるのが特徴
しっかりとした仕上げ加工で、火入れも十分に入っており、軽やかな香りの先にスイートコーンのような甘味を感じるお茶

品種:玉川早生
クラフト:浅蒸し
ブレンド:ストレート
ジャンル:煎茶

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お父さんと二人三脚で作っているお茶なのですね。

佐藤
そうです。お茶を一緒に作り始めて、親父は結構思い切ったことをする人なんだな、と再認識しています。ので、「えっ、ここに道を作っちゃう?大丈夫?車に乗って走るのは俺なんですけど?」と、内心驚きながらも、一緒にユンボを使って道をも作ってしまいます。斜面を削ってスロープを作ったり、石を積んで橋を架けたり。茶農家でもあり、きこりでもあるので、実行力はある親子かもしれません。自分たちで作った道を歩きながら、「家を建てるなら大黒柱はあの木かな」なんて話すのはきこりならではでしょうか。何でも自分でやらざるを得ない環境ですが、決してイヤではありません。僕が生まれた時からずっと、父は僕を仕事の相棒にしたいと期待していたでしょうから。これからも「やった方がいいけどやらなくてもいい作業」があれば「やる」方を選択し、地道に積み重ねていきます。

佐藤
「志田島園」というのは僕がつけました。落合にあった志田島村は、うちの佐藤家一軒だけの村だったんです。敷地全てが村であり、佐藤家は村長であり村民。せっかくの名前なのでいただきました。

茶園の説明をしながら、対話を通じてこちらがどのようなお茶を好むのかを考えて提供してくださった園主の佐藤さん。茶園散策した後に、縁側で気持ちにぴったり合うお茶を飲む。この間合いの心地よさ、ツアーをリピートするお客さんがいるのも大いに頷けます。お茶の時期は時々、志田島園を手伝うイベントも開催されています。本当の茶農家の生活を垣間見ることができますよ。

取材・文/朝比奈 綾 撮影/近藤ゆきえ

イチオシポイント

茶農家の暮らしを体験

玉川を取り巻く環境がまずイチオシだと話す佐藤さん。玉川地区は静岡駅から車で約40分、それほど離れるわけではないのに、確かに町中とは全く違う澄んだ空気感です。中でも志田島園の茶園は、元々土の質がいいことに加えて、自家製の肥料でお茶に最適な土壌へと整えているため、茶の木が元気。山のてっぺんまで上がって見下ろせば、段々畑の美しさに誰もが目を奪われるはず。ウグイスやホトトギスが啼き、わさび田の沢のせせらぎを耳にし、佐藤さんとお父さんが架けた橋を渡り、整えた道を歩く。ツアーや農業体験で、様々な茶の木を目の当たりにし、本当の茶農家の暮らしを体感できることも大きな魅力です。

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玉川地区のほぼ中央に位置する川島地区にある小さなお茶農家です。
7代続く農家でお茶の栽培加工を中心にワサビ栽培や林業を行っています。
労力を惜しむことなく昔ながらの手間をかけたお茶作りを心がけています。

志田島園

静岡県静岡市葵区落合1298

090-5104-2514

志田島園で生産される玉川茶の紹介と販売

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